始めの言葉

「プリンターから印刷できて当たり前」と、ユーザーからもSIerからも軽視されがちなプリンターの世界ですが、実際にはお困りだったり、思ったような印刷結果が得られないまま我慢してお使いの皆様のために、今までの経験が役立てばと、このブログを立ち上げました。印刷の基本から、応用情報、問題の解決方法を情報発信すると共に、PDF化など、これからどうするかについても、ご相談に乗れれば幸いです。ご質問はコメントでお寄せください。

2016年4月17日日曜日

連続用紙への印刷から、カット紙への印刷に移行する -第6回 事前印刷用紙からの移行-

10年以上前から、ドット・プリンターやライン・プリンター等のインパクト方式のプリンターは、レーザー・プリンターや複合機等の高速、かつ音の小さなプリンターに置き換わることによって、無くなっていくと言われ続けてきました。その傾向は今も続いていますが、継続して使用されるケースも多くあります。
その理由は、
- お客様(取引先)が、複写式の帳票を指定している。(例 : 請求書、納品書)
- プリンターで印刷した複写伝票が製品や部品と一緒に人から人に伝わっていく間に、手書きの情報(サイン等)が書き込まれたり、1枚ずつ剥がされて、それが部署毎に使用されるというような業務の流れとなっている。(例 : 配送伝票、工場内で使用する生産指示書)
- カット紙化することで、かえってコスト・アップになることが見込まれる。
など、様々です。
複写式であれ無かれ、事前印刷された用紙では、罫線やタイトル、会社の角印は、カラーで印刷されていて、ユーザーは、その色で、どの種類の伝票かを見分けているというケースが多くあります。
事前印刷用紙の例-チェーンストア統一伝票

左のイメージは、標準的な「チェーンストア統一伝票」を、1枚ずつ剥がして、縦に並べたものですが、1枚ずつ事前印刷部分の色が異なっていて、色で見分けがつくようになっています。
それらをカット紙に移行する場合に、カット紙にも同様に事前印刷するのでは、コスト面のメリットが出にくいだけでなく、カット紙用プリンターの印刷位置の精度を考慮すると、現実的とは言えません。
従って、通常は、白紙のカット紙に印刷することを前提とすることになります。
そうなると、カット紙化を検討する際には、カラー印刷の対応方法を考える必要が出てきます。
具体的には、次のように考えてみては如何でしょうか?




1. カラーで印刷する必要がある部分の面積は、所詮限られている。今までどおりの使用感をユーザーに提供するためにも、同じイメージになるように、そのままカラー・プリンターで印刷する。
-> あるお客様では、このように考えて移行したところ、インク・リボン代に比べて、カラー・トナー代は高くなったものの、プリンターの保守契約費用、用紙代を削減できた他に、ユーザーが、各種の連続用紙の伝票を架け替えて印刷していた手間が不要になって、全体的には大幅なコスト削減ができたと判断されたケースがあります。

2. カラー・トナーは高いので、モノクロ印刷としたい。しかし、ユーザーの使い勝手を考えて、事前印刷と近い色の付いた市販のカット紙を使用する。
-> この場合、モノクロ印刷用のトナー代は安価ですし、薄い緑色や青色などの色の付いたカット紙は市販品がありますので、コストの削減が可能なことは明らかです
ただ、プリンターに複数の用紙トレイが付いていて、用紙トレイ毎に、同じA4サイズでも、異なる色の用紙をセットするという運用が必要になります。そのために、帳票毎に印刷する際の用紙トレイが特定されるような仕組みにしておく必要があります。

3. 移行を切っ掛けにして、モノクロ印刷に切り替えてしまう。
-> 罫線やタイトルの文字など、今までカラー印刷されていた部分は、グレーで印刷するようにすれば、データ部分との違いが分かりやすいので、社内用の伝票なら、これで十分と割り切ってしまうという考え方です。
こうすれば、上の2. のような運用上や、プログラム上の考慮も不要です。社内伝票でしたら、ユーザーにはモノクロ印刷に慣れていただくという前提で、移行することは可能かと思います。

では、1. のケースにおいて、-第1回 基本の考え方- と同様に1年間でどの程度のコスト削減が可能かを試算してみます。

<現行の印刷の前提条件>
- 現行のプリンター : 5400-L06 ライン・プリンター
- 印刷枚数 : 4,000ページ/月(5400-L06 の想定月間印刷枚数の1/3)
<現行の年間のコスト>
- プリンターの保守契約料金 : 223,200 円/年
- インク・リボン代 : 1.1 円/枚
- 複写用紙代 : 5円/ページ
223,200 + (1.1 + 5) x 4,000 x 12 = 516,000 円/年

<移行後の印刷の前提条件>
- カット紙に移行後のカラー・プリンター : リコーSP C830(印刷速度 : 50ページ/分)
<移行後の年間のコスト(用紙代を除く)>
- プリンターの保守契約料金 :54,400 円/年(サービス・パック5年の価格から算出)
- 消耗品代 : 8 円/枚
- カット紙代 : 1円/枚
54,400 + (8 +1) x 4,000 x 12 = 486,400 円/年

用紙代も含めて試算すると、年間、約30,000円のコスト削減が見込まれることが分かります。これ以外に、用紙の架け替えの手間や、事前印刷用紙の在庫の管理といった見えないコストの削減も期待できます。
次回以降では、どのようにしたら移行できるかをお話します。

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